2007年05月14日

セゴレーヌ・ロワイヤル氏によるアニメ糾弾(4)

 セゴのアニメ批判の続き。

 今回の内容は、直接的なアニメ批判というより、下請けの会社(ABプロダクション)にアニメ紹介番組の制作を丸投げするテレビ局(TF1)とその首脳陣が非難の対象となっています。

 長いし、面白みには欠けるかもしれませんが、当時のアニメを取り巻く「利権構造」がロワイヤル氏の視点から批判されます。また、ところどころアニメに対するネガティヴな認識が顔を出します。

 ロワイヤル氏のお子様はさぞかし健全に育成されていることと推察いたします。


〜以下、訳。


ドロテの裏切り

〜〜以下、ロワイヤル『チャンネル変えまくり〜』からの引用。

 たった一社の制作会社が青少年向けの放映枠を独占している場合、放映されるフィクション番組の選定においては、単純なことだが、番組の多様性が最低限確保されなければならないのではないか?

 事実、TF1は青少年向けの番組を、ドロテ氏が勤める独立の民間番組制作会社、「ABプロダクション」に丸投げした。このようなやり方が、「通信と自由に関する国家委員会」がTF1に認めた放送許可の精神に適合することなのか、大変疑わしい。事実、TF1はこの下請け番組制作会社を一度も問題にしたことはないのである。個別の、あるいは複数の下請け番組制作会社も[ブイグ氏と]同様に「通信と自由に関する国家委員会」において聴取されるべきだったのではないだろうか。あるいは、TF1とABプロダクションとの間で結ばれた契約に、ブイグ氏が述べた宣言の基本的内容を反映させることが可能だったはずだ・・・。

 しかし実際には、その契約は、この下請け会社による三年に及ぶ独占を許したのであり、金儲けのことしか取り決めていなかったのである。この契約には、[TF1民営化の際に]「通信と自由に関する国家委員会」で表明された[ブイグ氏の]「志」(*注1)に関する文章も、言葉さえも全く含まれていないし、そして過度に暴力的な番組や馬鹿馬鹿しい番組を放映しないことを求める項目さえ、ないのである。ABプロダクションは、「通信と自由に関する国家委員会」がTF1に課した制約からは、まるで全く自由であるかのようだったのだ!この部門における競争などなされ得ないかのようだ!

もうかる事業

 フレデリック・オシェデ(芸名ドロテ)に支払われる報酬とは別に、TF1はABプロダクションから、一時間あたり12万5千フランの単価で、500時間分の番組を購入している。さらに「ドロテ・ヴァカンス」の放映に関して240時間分が加わり、同様の額で請求された(注1)。
 このような取引は、間接的な利益を考慮に入れると、特にもうけが大きい。先ず、番組に登場する歌手は、当然、レコード、写真集、玩具に関して、ABプロダクションと契約を結ぶのがほとんどだ。アニメーションのビデオカセットも同様にもうけになる。そして・・・「36 15バイオマン」(注2)までもがある!言うまでも無く、雑誌も番組と同じくらい馬鹿馬鹿しい(その創刊号には、わけの分からない日本のアニメーションの要約、絵の中の陳腐な言葉、頭から水をかぶってずぶぬれ、そしてなんともひどい見出ししか載っていない。この怪奇な箇所をどうやったら取り除くことができるのだろう!)。

 番組制作会社には、少なくとも一年に1500万フランの広告料収入があるはずで、そのうち4分の3はTF1に流れる。しかし、ABプロダクションは放送番組の制作によって産み出された利益の90%を手に入れている。ABプロダクションが購入するアニメーションや番組シリーズの価格を選別し、調整することを、TF1は単に「忘れている」のであり、TF1の側こそ問題なのである。従って、からくりは簡単なのである。もっと金を稼ぐためには、番組編成のバックにいるのであろう日本の仲介業者を通して、最も安い値段で購入し、そのフィルムを何キロ分も売ればよいのだ。恐怖と血と涙を吐き出すそのフィルムには、途中で広告が入り、ちょっとしたお喋りやひどい馬鹿話(頭から水をかぶってずぶぬれ、赤ちゃんの格好をした司会者、食べかけのクロワッサン、陳腐な言葉・・・)が加えられているのである。

 しかし、なぜ毎日こうしたことを繰り返すことができるのだろうか?独占は誰にとってもうんざりのはずだ。そこで、プレゼントを用意して視聴者を固定化することにしたのだ。ドロテは言う。「皆さん、プレゼントが15個あります。分かりましたか?15個です」(私の三歳になる娘は私にこう言った。「違うよ、プレゼントが15個あるんじゃなくて、プレゼントを貰う子どもが15人いるんだよ」と)。しかしこのプレゼントのために、テレビを離れることはできず、最後まで見なければならないのだ。ジャッキー[=ドロテの愛称]が「さあ、みなさん」といつ言うのか、あるいは直前のどの歌のタイトルを当てるのか、見なければ分からないからだ。プレゼントとは何か?以前の[番組の]主人公がこう言いそうだ。「ちくしょう!だが当然だ」。プレゼントとは、ABプロダクションが制作したカセット、レコード、そしてイラストブックなのだ・・・。

 ドロテは、本や旅行ではもう稼げないのだ。事実、ABプロダクションは既に書籍販売部門も旅行代理業部門も持っていない。

 親愛なるブイグさん、現代の子どもや青少年の生活には多大な辛苦があるということを私たちに認めてください。家族間のいさかい、学業、暴力的な情報、将来の仕事に関する不安・・・。どうしてさらに別の辛苦を付け加えようとするのですか?どうして彼らに夢や優しさを与えないのですか?どうしてあなた方の大人のゲームの中で、児童を少しでも守ろうとしないのですか?

 子どもを守りながらお金をたくさん稼ぐこともできる、ということをご理解ください。子どもは美しいもの、楽しいもの、おもしろいもの、自然、動物、冒険、最後は上手く解決される不安、といったものが子どもは好きだからです。タイプはいろいろ異なりますが、善人と悪人も好きです。だから、彼らの夢をコンクリートで塗り固めないでください。児童は巨大な建築現場じゃないんです(*注3)。

 ですからブイグさん、あるいはそうでなければルレさん(*注4)、私たちの子どもが、お腹に恐怖を抱え、唇に嫌悪感をたたえたまま床に就くのではなく、唇に笑みを浮かべ、目に小さな星をたたえて床に就けるように努力をしてください。あなた方の宣誓を読み直してください。あなた方の同僚にもう少し努力するよう頼んでください。そして、時間のあるうちに、ABプロダクションとの契約をやり直してください。

 もうこのようなメチャクチャは止めてください。あなたの視聴率を意義あるものにしてください。ドロテが獲得している視聴率、彼女の人気、そして子どもたちが彼女によせる信頼を利用することで、子どもたちを楽しませ、伝えて、感動させて、学ばせるために何ができるかを考えてください・・・。「ファン」の間でさえも、その過度の金儲け優先のために怒りが広がり始めており、彼女の信頼は失われつつあります。ニコラ・ユロ(*注5)に青少年向けの番組放送枠を与えて、雰囲気を変えてみてはいかがですか?レジの音も少しは静かになりますよ[=金儲け優先を少し控えてはいかがですか?]。

 それでもなお、あなたが行動をおこそうとしないのでしたら、いつの日か、親や子どもがこのような番組をボイコットしないとも限りませんから、お気をつけください。[そのような日が来ても]、あなたにとっては、親や子どもは騙されやすい人ではなかったのだ、とか、彼らは自分の頭でチャンネルを変えることができたのだ、と気付くだけのことなのでしょうけど。

 もちろん私は、TF1が視聴覚高等評議会で、「1990年12月31日までに、このような問題を改善し」、アニメーション制作のために160万フランを拠出し、「青少年向けに脚本が書かれた番組」を補充的に69時間分制作する、と宣誓したことを無視しているわけではない。

 しかし、それが真摯な宣誓だったのか?と疑う余地はありそうだ。TF1は、パトリック・ルレ社長が宣誓したように、1990年12月31日までに現状を変化させることがはたして実際にできるのだろうか?ABプロダクションとTF1の契約は1990年5月に切れるのだ。そうであれば、[青少年向けの]新しい「脚本の番組」は誰が制作するのか?排他的独占権を持っているABプロダクションに制作させるのではないとするならば、最も良い解決法としては、全く単純なことだが、1987年にフランシス・ブイグが[「通信と自由に関する国家委員会」で]宣誓した主な約束[=フランス人の作家に子ども向け番組を制作させる]をTF1が履行するだけでよいのだ。しかし、ABプロダクションが購入した出来の悪い作品[=日本のアニメや番組]の在庫はどうするつもりなのだろうか?

 ABプロダクションは、自分自身の利益のことはよく計算していたものの、何百万という子どもたちからの信用を悪用しておきながら、その子どもたちのことは配慮していなかったに違いない。7〜8百万枚レコードが売れ(放送のおかげで生じたこの間接的効果にTF1は利害関係を持っているのではないか?そうでないとしたら、なんという商業的見通しの欠如であろうか・・・)、そして(青少年向けの番組のために公営放送に支給される全予算に匹敵する)2500万[フラン]の取引があった。このような金づるがいつまでも続くわけではない、と疑問に思う時期に来ているのだ。

 とは言え、ABプロダクションはこれからも日本のアニメーションのビデオカセットを販売するのであるから、過渡期が始まったに過ぎないのだ・・・。しかし、パスカル・ブルニョ(注*7)が最近次のように感動の言葉を述べている。「それにしても、国立映画センターのアーカイヴにはたくさんの放送番組が所蔵されているものだ」。

〜ロワイヤル『チャンネル変えまくり〜』46〜51頁の引用。
〜〜以下、Xerbias氏の分析。

分析:ドロテとそのスタッフが制作していたアニメ放映番組のことを知らなくても、日本のアニメーションを好きになるということは全くありえることでした。セゴレーヌ・ロワイヤルは、「子どもたちがなんとも酷い日本のアニメーションを見るようになったのは、ドロテの裏切りによるものだ」という、明らかに逆転した論理を展開しています。このテレビ司会者のファンでなくても、[彼女が]そんなに酷くはなかったいうことを今日確認できますし、ジャッキーの司会振りが「クラブ・ドロテ」の中で最も楽しい時間であり、懐かしさをかきたてられるのです。

 加えて、雑誌「ドロテ・マガジン」には、わけの分からない日本のアニメーションの要約が載っているとロワイヤルは言います。子どもは分かっていることがロワイヤルには分からないということでしょうか?当時日本のアニメーションを見ていた人は、自分たちが見ている映像を非難するようなことはありませんでしたが、セゴレーヌ・ロワイヤルが推奨する検閲に対しては非難を浴びせていたのです。

〜以上、訳終わり。

 参照先:http://xerbias.free.fr/?page=3


 *注1:前回の記事に登場する、1987年のTF1民営化の際に、「通信と自由に関する国家委員会」でブイグ氏が表明した宣言のことと思われます。つまり、「極東の暴力的なアニメーションとは異なる、子供向けの番組をフランス人の作家に制作してもらう」、という内容の宣誓です。

 *注2:1フラン=20円とすると、一時間あたり250万円、500時間で12億5千万円。

 *注3:「36 15」は、1982年にサービスが始まった、フランスが誇る家庭向けコンピュータ情報検索システム、「ミニテル」の呼出し番号。このミニテルの、画像の無い文字だけの画面で、『超電子バイオマン』を楽しむサービスがあったのだろうと推察されます。フランスでインターネットの普及が遅れたのは、このミニテルが既に普及していたからとのことです。

 *注4:前にも述べたように、TF1オーナー(当時)のフランシス・ブイグ氏は、建築会社から身を興した人物。

 *注5:パトリック・ルレ氏は、ブイグ氏の側近で、1987年の民営化直後にTF1副社長、翌年社長に就任した。

 *注6:ニコラ・ユロ氏(1955~)は、テレビリポーター・環境保護活動家・作家。1987年からTF1で放送された環境保護番組の司会を務めて有名に。1990年に自然保護のための財団を設立。穏健な環境保護の観点から政治との結びつきも緊密で、環境相就任を提案されたり、今回の大統領選挙に出馬するという話もあった。

 *注7:パスカル・ブルニョ氏は、Antenne2やTF1などのテレビ局で、80年代から90年代にかけて、ドキュメンタリー番組や討論番組など、数々の有名番組を制作してきた女性ディレクター。現在はエゴ・プロダクション社長として映像作品制作に携わる。

posted by administrateur at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | ロワイヤル氏のアニメ批判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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